アーカイブ
はじめに
以前の記事「MVV見直しの舞台裏(その2 ~Mission決め~)」では、MVV(Mission / Vision / Value)再策定における「いちばん泥臭いところ」について紹介しました。
Missionを決めるプロセスの中で、「直球勝負(シンプルさ)」という新MVVづくりのコンセプトは見えてきたものの、議論の泥臭さがここで終わることはありませんでした。
MVV再策定を進める中で、私自身がいちばん悩み、同時にいちばん大きな学びを得たテーマが Vision です。
今回はその続編として、MVVの中でも特に議論が揺れやすかった Vision(ビジョン)をどのように定めていったのか、その舞台裏を書いてみます。
私たちのVisionとは何か?
まず最初に行ったのは、Visionの定義の認識合わせでした。
いくつかの定義を読み比べて共通していたのは、Visionとは「将来的に目指す理想の姿(未来像)」を示すという点です。
つまり、Visionは「ありたい姿」「あるべき姿」を言語化したものと言えます。
では、私たちの思い描くVisionはどちら寄りなのか。
「ありたい姿」なのか、それとも「あるべき姿」なのか。まずこの問いから、認識を揃えることにしました。
結論から言うと、私たちは Vision を「あるべき姿」として定義し、以降の議論を進めることにしました。
理由はシンプルで、「ありたい姿」だと理想が広がりやすい一方、行動や意思決定に落とし込みにくいからです。
Vision は、日々の判断に迷ったときに立ち返る「判断の拠りどころ」としたい。
組織として「こうあるべき」に寄せた方が、一貫性を保ちやすい Vision になる。
この前提を揃えた上で、Vision の言語化を進めていくことにしました。
アシスタントとしての生成AI
Visionの方向性が見えてからは、草案を作っては磨き直し、組み替え、再構築する、それらを何度も繰り返しました。
重視すべきキーワードを出し合い、言葉のニュアンスや優先順位を揃えるなどの試行錯誤の連続です。
そして、この試行錯誤を加速させるために、生成AIを活用しました。
たとえば、
・策定済みのMissionや議論で出た意見・キーワードを渡し、たたき台を複数パターン出してもらう
・表現のトーンを変えて量産し、役割(批評者、編集者など)を与えた上で比較・評価してもらう
・「文章を短くする/硬くする/熱量を上げる/ポエム感を抑える」といった調整案を出してもらう
・誤解を招きそうな表現(意図せずマイナスの印象を与える言い回し)がないか洗い出してもらう
…などに使うことで、ブラッシュアップを重ねていきました。
この積み重ねを通じて得た教訓は、AIを「答えを出す存在」というより、あくまで「アシスタント」として使うのが、Vision策定では効果的だったということです。
AIがゼロから作った案は整って見える一方で、どこか「私たちらしさ」が乗りにくいと感じることがありました。
Vision策定に限らず、「AIの出した答えをどう活かすか?」は最終的に人が担う領域なのだと思います。
ただ、試行錯誤を加速してもなお、Visionづくりには別の難所がありました。それが「要素の渋滞」です。
要素の渋滞とMission・Visionの衝突
Visionの言語化を進める中で、次にぶつかったのが「要素の渋滞」でした。
議論が進めば進むほど、「これも大事」「あれも入れたい」という要素が増えていきます。
・技術力を磨き続けたい
・学び続ける組織でありたい
・お客様に価値を届けたい
・社会に良い影響を与えたい
・日々の意思決定に使える言葉にしたい
どれも正しい。どれも捨てがたい。
ただ、要素が増え続けるほど、Visionの輪郭はぼやけていきます。
その状態で「でも短くまとめたい」と削り始めると、今度は残る言葉がMissionっぽくなる。
そのたびに「これ、Missionと何が違うんだっけ?」という問いに引き戻されました。
そこで改めて「明日を変えていく」とは何を意味するのかという原点に立ち返り、結局何を大切にしたいのかについての交通整理を行いました。
その結果、出た結論が、
・私たちが「変わる」とは『自らをアップデートすること』である
・誰の明日を変えていくのか、それは『あらゆるステークホルダー(広い意味での社会)』である
・社会の明日を変えるための手段が『テクノロジー』である
…これらが核である、ということでした。そうして生まれたのが、
自らをアップデートし、テクノロジーで社会の明日を変える
というVisionです。
どこから始め、どこに向かうのかの一本線が通ったことにより、全社的な合意のもと、腹落ちする結果となりました。
まとめ
本記事では、Visionを「日々の判断に立ち返る基準」として定義し、一文に落とし込むまでの舞台裏を紹介しました。
次回は、このVisionを前提に「各々がどう行動するか」を定めるValue策定の舞台裏を紹介します。
「どんな価値観と前提でコードを書いている会社なのか」を少しずつ知っていただくきっかけになれば嬉しいです。
積極採用中!尖ったPythonエンジニアへの第一歩はこちらから


